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くく、どのように設計すれば基準をクリアーするのかわからないという事態も生じうる。国内でも鋼船構造基準を手始めに船舶安全法関係省令の「機能要件」の取り入れを含めた改善を進めているが、数値基準の方が分かり易いという事業者のために、基準を満たすサンプルとして従来通りの数値基準を告示で例示する予定である。国際基準の機能要件化を進めるに当たり、基準を満足するサンプルとしての数値基準の整備も必要かも知れない。いずれにせよ、事業者にとって使いやすい基準となるよう注意が必要である。
RO/RO船の損傷時復原性基準については、かなり激しい議論の結果、地域基準の導入が許容されることとなったが、今後は機能要件の導入により激しい論争を避けられるかも知れない。復原性基準のように気象・海象条件と関係する基準として、例えば、「その船舶が航行する海域の気象、海象条件に応じて…しなければならない。」との規定ぶりとすれば、その要件を達成する手段も地域の気象・海象条件に応じて異なることが許容されることとなり、実質的な地域基準の導入に他ならないこととなるからである。
(2)ヒューマンエラーの防止を目指した基準
IMOでの安全基準作りは伝統的にはハード面の規制に重点が置かれてきたが、海難事故の約8割がヒューマン・エラーによるものであるといわれており、既に「ヒューマン・エラーを防止する」との視点に立った基準作りが行われている。具体的には、船舶の運行管理体制の確立を目指してのISMコードの強制化、船員の訓練、認証制度の改善を目指すSTCW条約の改正の採択が行われた。これらはいずれもソフト面の規制強化である。ISMコードでは船内業務の遂行のための多くのマニュアルの整備や船員の教育・訓練計画の策定・実施が要求されることになるが、マニュアル通りに業務が遂行されるとの保証は必ずしもないのが不安材料である。これからの船は簡潔なマニュアルに基づき容易に船内業務を遂行できるようにする必要がある。
IMOではこれらのヒューマンエレメント関係基準のフォローアップを継続することとしているが、併せて、MSC(海上安全委員会)から各小委員会に対しヒューマン・エレメントを考慮した基準作りを行うよう指令が出されている。具体的な考慮事項は次の通りであるが、今後の各種基準の見直しはこれらの基本的な考え方に基づき行われることとなる。
?人員に対し明確かつ妥当な指示が与えられることを確保すること。このような指示には、適当な運転マニュアル、運転ガイドライン、紙に書かれた或いは図示された指示及びラベルの表示を含む。
?可能な限り、簡略化されかつ標準化された用語、シンボル及びサイン

 

 

 

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